8 秋冬野菜の準備

 夕方、車でトンボの群れをかいくぐって、畑へ向かう。トンボは果敢にこちらに向かって飛んできて、まるで鳥のようにたくましく見える。うまく避けていくトンボが大半だが、「ビシッ」と車にあたる音も聞こえて、トンボが脳震盪を起こしたかなと思う。加害事故を起こしたような、ちょっとした罪悪感が私を襲う。

 畑の隣は田んぼで、まだ青い稲に穂がつき始めている。そこにいたオタマジャクシが成長したのか、この季節の畑にはカエルがたくさんいる。息子は虫が大好きなのだが、カエルにはさほど興味がないらしい。

 丸ナスが次々と採れる。コロンと丸いフォルムがかわいらしく、つやつや光る紫色の深みが美しい。見ているとうれしくなってくるくらいだ。かと思うと、ヘタには棘が生えている。同じ市民農園で畑をやっている人から食用ヘチマをいただく。皮を剥き、炒めて食べてみたら、ズッキーニのような食感でなかなか美味しかった。

 少しずつ秋冬野菜の準備をはじめる。育ちに育って、私よりも丈が高くなったオクラとシソを抜く。どちらもまるで木のような枝ぶり。根も張っていて、なかなか抜けず苦労した。キュウリも抜くすぐに汗だくになる。ピーマンとナスは10月半ばまで採れるらしいので、それだけ残す。秋冬の計画はこんな感じ。

 草刈りをして、スコップで耕す。石灰を撒いて、クワで混ぜ、一週間置く。秋冬野菜のための土づくりの時期だ。一週間が経ち、牛ふんと鶏ふんを撒こうと思っていたら、台風が近づいているので、延期だ。

 「エンマコオロギがいたから、もうあきだね」と息子が言う。私は朝夕の気温の変化で秋を感じるけれど、彼は虫で季節を感じるらしい。畑では、さまざまな虫の合唱が聞こえる。