新居で、書けなくなって。 - 「書く」とき・ところ・道具とわたし #6

一度「飲み物屋さんの、『よっこいしょ』」というタイトルで「書くときところ~」には参加させていただいたのだが、その後入籍して引越して、新居でものを書くようになったので、今の私の「書く」について改めて振り返ってみようと思う。


「書く」という話題の前に、私はまず新居の内装に引越し前からものすごく不安を感じていた。というのも、内見したときに、真っ白なフローリングが床を覆い、リビングダイニングには窓がないという物件で、さながら精神病棟の隔離室のような感覚を抱いていたからだ(私には入院歴があるのでそう感じた)。

「あの部屋で体調崩したらどうしよう」私はまだ彼氏である夫に不安である不安であると訴え続けた。夫は「確かに心配だねぇ、でもまぁあそこしかなかったじゃん、大丈夫だよ」と言っていて、まぁそりゃそうなんだけどさ……と思いながら、閒の中では「不安だ不安だ」と書いていた。悠平さんに「俺にはさとみんが新居で白いフローリングも悪くないねと言っている未来が見えるね」というようなコメントをもらい「ほんと!?」と思っていたのだが、案の定今の家に引っ越してきて家具が揃ってきて部屋が片付いてくると、「なんだよ、白いフローリング最高かよ、おしゃれじゃん、次の家も白いフローリングがいい」と思う私なのであった。


話を戻そう。引っ越してきて片付けも終わって落ち着くと、さあ書き物をしよう!……という気持ちには中々なれなかった。私の書く場所は以前まで「ベッドの上」だったわけで、新居で私が作業場とできたのはダイニングテーブルの一角だったのだが、そこに座り、さあ書くぞ!と思っても、言葉が出てこない。何も出てこない。空っぽになってしまったのだった。これには正直私もどうすればいいのかわからなかったし、でも私、一応職業ライターでもあるよね……?仕事しなきゃ、でもできない、エッセイなら書ける?いや書けない……と八方ふさがりなのであった。

書けないときはインプットを増やすといいというアドバイスを頂いたりもしたのだが、本を読む気にも映画を観る気にもならない。本当に空っぽになってしまって、薬の副作用もあり寝てばかりいる生活になってしまった。


そんなとき、閒の中の人に「さとみさんの夫とのなれそめを読んでみたい」と言われた。夫とのなれそめか、それなら書けるかもしれないと思い久しぶりにGoogleドキュメントを開いたら、ぽつぽつと言葉が出てきた。一気に書きあげてしまって、そうしたら「私、ちゃんと書けるじゃん」と自信がまた戻ってきた。その一回の「書けた」という体験によって、私はまたものを書く生活に戻ることができた。

以前の家のように、飲み物屋さん(飲み物を大量に自分の手元に置いておく習性があったので夫にそう言われていた)はしなくなったし、格段に広く綺麗な家に引っ越してきて、これを書いている。


また、今までは音楽を聴きながらものを書くということを特にしてこなかったのだが、最近はもっぱら「ナンバーガール」というバンドのアルバムを聴きながらものを書くことが多い。なぜか知らないけれど、ナンバガを聴きながらものを書くとすごく捗るのだ。こういった新しい要素も新居に越して加わった。ナンバガのアルバムは私が外でOLをしていた頃、通勤時にもよく聴いていて、その時のこともふと思い出したりする。



「書けなくなる」ということが物書きにはよくあると思う。だがそんなとき、誰かのひとことが背中を押してくれて、スイッチが入ることもある。このことを肝に銘じながら、これからもものを書くということを楽しんでいきたいと思う。