閒(あわい)の住人が、今週観た/聴いた/読んだ/食べたものなどを、本人の紹介コメント付きでいくつか選出してご紹介します。
■聴いたもの:寺尾紗穂「光のたましい
寺尾紗穂の音楽が好きだ。なかでも近ごろ響いてくるのが「光のたましい」。音楽を言葉で語るなんて無粋な気もするけれど、挑戦してみる。
前奏が揺れる光のきらめきを表しているようで、そこに何か軋むような音がする。その光とともに私も揺られているような、軋みが私自身であるような、軋みとともに何かが生まれるような、そんな感覚がある。そこに寺尾紗穂ののびやかな歌声が乗ってきたかと思うと、重低音が響いて転調し、サビに移る。一連の流れがすばらしいと感じるし、歌詞が吸い込まれるように耳に残り、胸に迫る。
私たちみんな孤独なたましい
波打つからだ横たえて
私たちみんな光のたましい
見えない右手探して眠る
寺尾紗穂は言葉にならないもの、目には見えぬものの存在を信じているのだと思う。私たちは人間で、それ以前のものでもある。
私たちみんな孤独なたましい
心凍らすことはできずに
私たちみんな光のたましい
見えない右手抱いて眠る
言葉になる以前のものを、彼女は歌い書き表現して生きている、そう感じる。そこから生まれるものはひとを心地よく揺らす。この曲は私にとってそういうものだ。
もえさんより
■聴いたもの:二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band『GOTTA-NI』
スタジオジブリ「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」で知られる、二階堂和美さん。彼女と総勢22人のビッグバンド・Gentle Forest Jazz Bandとのコラボレーションで生まれた2016年のアルバムです。
二階堂さんもGentle Forest Jazz Bandも大好きです。あまりCDを聴かないのに購入に踏み切ったのは、ライブDVDも入っていたから。さらにいえば、DVDに「What a Wonderful World」が収録されていたからです。
とてもよかったです。エンターテインメントでは当たり前なのかもしれませんが、二階堂さんもGentle Forestもサービス精神がすごい。「私たちは全身で楽しんでいるから、全身で楽しんで帰ってね!」の感じ。
私は家でよく歌っている、しかも小声とか鼻歌ではなくカラオケですか?くらいの感じで歌ってしまうのですが(実家暮らしの利点だ)、このライブDVDで「お別れの時」を聴きながら歌っているときに母の歌声に似てきたことに気がつきました。母とカラオケに行ったことはなく、紅白歌合戦や民放のカラオケ番組などを見ているときに曲に合わせて歌うのを聴いているくらいなのですが、なんとなくなめらかさが似てきました。私も年をとったんだな…。
Kazuyoさんより
■観たもの:『∀ガンダム』第20話「アニス・パワー」
ガンダムシリーズのなかで一番好きなのが『∀ガンダム』です。それがいま、YouTubeのガンダムチャンネルで毎週1話ずつ無料配信していて、それが生きがいの一つになっています。お金貯めて円盤買いたい。
私たちが生きる時代よりはるか未来の「宇宙世紀」を舞台とした「機動戦士ガンダム」の時代よりも更にはるか未来の話、とある理由で一度地球の文明は崩壊してしまって、そこからまた数千年の時間をかけて、ある程度の生活・文明レベルを取り戻した地球が舞台のお話です。文明崩壊後に宇宙へ脱出した月の民「ムーンレイス」が地球への「帰還」を目指したことがきっかけで、ムーンレイスと地球人が出会い、行き違い、戦争が起こります。
戦争が起これば街は燃え、人は死に、憎しみも生まれるわけで、しかしそれと同時に、当然そのなかでも人は生きていくためにパンを焼いたり畑を耕したりするわけで、『∀ガンダム』はそうした”現実”を細やかに淡々と描いていく作品です。ガンダムをはじめとするモビルスーツ同士のドンパチもあるにはあるんですが、他のシリーズと比べると非常に少ない。人を殺す「戦争の道具」にもなる∀ガンダムは、その身を橋にして避難民の道をつくったり、指に洗濯物をかけたり、無人となった牧舎の牛さんを胸のスペースに入れて運んだり(そこには本来ミサイルが入る)と多くの場面で「生活の道具」として使われます。∀ガンダムを駆る主人公のロラン・セアックは、ムーンレイスでありながら地球の人たちの側に立ち、両勢力のかけ橋となって戦争を止めるべく奔走する、心優しい青年なんですね。
映画『この世界の片隅に』を彷彿とさせるようなエピソードがたくさんあるのが『∀ガンダム』の特徴で、そのひとつが今週配信された第20話「アニス・パワー」です。
戦争に巻き込まれるからと避難を勧められても、先祖代々の土地を守ろうと立ち退きに応じないアニスおばあさんと、ロランたちが出会い、同じときを過ごしたほんの1日の出来事なのですが、これがもう名作です。
ムーンレイスと地球の民兵組織「ミリシャ」の小競り合いが近くで起こって、彼女の土地も巻き込まれてしまいます。
「おまんまを誰からいただいてると思ってるんだ、この土っころが作ってくれんだよ!」
というアニスおばあさんの叫びを聴いて、なぜだかポロポロと涙がこぼれました。
やむを得ず∀ガンダムで出撃したロランが、畑の被害を最小限にする戦い方をしながら「戦争するなら場所を選びなさいよ!」と叫んで敵モビルスーツを撃退するシーンも、心優しいロランの、平和を愛するからこその怒りが伝わってきて、これまた良いです。
ゆうへい
■読んだもの:村田椰融『妻、小学生になる。』
以前から気になっていたこの作品をふと読み始めたら止まらなくなった。この作品は、10年前に交通事故で他界した妻が"生まれ変わり"として10歳の少女の姿で家族(夫と一人娘)のもとに現れる、という設定の群像劇だ。絵も可愛らしく、コメディ要素もあり、キュンとする場面も多い。楽しく読めるほのぼのした作品かと思いきや、その迂闊な想定は見事に裏切られた。よく考えてみれば、10歳の少女には当然ながら親がいて、夫を取り巻く環境にも様々な人間模様があるのだ。生まれ変わり……人が人に成り代わるということ、その圧倒的な救いと、罪深さ。読み進めるのが辛くなるくらい、心を揺さぶられる。
私事ながら、僕はつい先日友人を失った。そして今、妻と離婚しようとしている。喪失ということと、救済ということについて、考えずにはいられない。そんな時に出会ってしまった作品。よくぞこんな凄い作品を生み出してくれたものだ……という思い。
もときさんより
■まだできなかった動き:伸肘倒立
先月からいわゆる「壁無し逆立ち」を練習している。いつか息子にドヤ顔をしたい。一年くらいあれば、壁無しで逆立ちでぴたっと止まったり出来るようになるかなぁ。逆立ちしたままくるくる回るような、ブレイクダンスの技だって、何年か要すれば出来るかもだ。最近、ほんの少し、一秒未満、いや、四捨五入で一秒くらい、出来るようになってきた気がしている。
さて、逆立ちの練習方法の一つに、「伸肘倒立」というのがあるらしい(ブログで紹介してくれる諸先輩方に感謝)。まず、まっすぐ立つ。次に、体前屈みたいに、足元に両手を付ける。そして、だんだん手の方に体重を移して、勢いは付けずにそっと足を上げていき、逆立ちの姿勢へ。
ん???え??ぜんぜん分かんない・・・
転んじゃいそうとか、筋力的にキツすぎて無理とか、なんかそういうんじゃなくて。ええっと。足だけそおっと上げるの意味不明でした。手も足も出ないとはまさにこのこと。ありがたいことに、「伸肘倒立ができない人」みたいな解説ブログや動画がありそうだから、観てみよう。怪我をしないように、ちょっとずつ練習すんの。
しょーいちさんより