「見ることについて」リレーエッセイ
「見ることについて」というお題だけを共有して、複数人の書き手がそれぞれに綴ります
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見たくないものというものがあるはずだ。見ずにはいられないものがあるように。
文章の中に混ざった全角英数字を見つけ出して駆逐することにだけ、僕の「見る」力は特化していて、他のことにはほとんど役に立たない。
朝起きると、まずスマホの通知欄をチェックする。SNSからの通知がたいていの場合来ていて、そのチェックから一日が始まる。人差し指でスイスイと画面をスクロールしながら、友人からのLINEや仕事上のSlackに何か新しいメッセージがないか確認する。
色彩が迫る、という体験をしたことはあるだろうか。絵画や風景、生き物といった、何か美しいものを見たとき、その色彩が、眼前に、胸に迫ってくるという体験を。そしてその体験を「色彩が迫る」と自ら言葉にして表現したことは、あるか。
私の眼には床の上の紙くずが映らない。
見えていないのか、それとも見ていないのか。焦茶のフローリングでも、日に焼け白茶色になった畳でも、変わりなくそこに落ちている物に気づけない。