9月、私の住む宮崎には台風がやってくる。
8月末に秋冬野菜の準備を始め、9月の第1日曜に元肥(もとごえ)を施した。その2週間後に種まきをしようと計画していたら、台風14号(ナンマドル)が直撃し、種まきは延期となった。
これがまた凄まじく強い台風で、今まで私が経験したなかで、最も強い台風だったんじゃないかと思うほどだ。畑の近くにある川も決壊が心配され、なんとか保ったものの、雨も風も激しく、畑は当然水に浸かっているだろうと覚悟した。
台風が過ぎた翌々日に畑に向かうと、水に浸かったのかは定かではないが、土が水をかなり多く含んでいた。畑には、夏野菜のうちナスとピーマンだけが残っていた。いずれも倒れ、枝は折れていた。しかし、生きていた。その姿は感慨深いものがあった。
周りの田の稲を見ると、ある程度成長しきっている稲は倒れていないように見えた。よく「半夏生(はんげしょう)までに田植えは済ませなさい」と言われるが、田植えを済ませる時期はとても大事なんだなと感じた。もちろん、これは素人の見立てに過ぎず、場所や風の向きなど運も大きいのだろう。
友人が子どもたちと一緒に楽しそうに田植えしていた稲は軒並みやられていて、胸が痛んだ。稲の倒れる様を見て、台風が昔「野分(のわき)」と呼ばれた意味を噛みしめた。
翌週、畝づくりをし、タネをまいた。大根にカブ、春菊にほうれん草、小松菜、葉ネギ。
翌日から雨が続いた。5日後、晴れたので畑に寄ると、すでに発芽していた。それぞれ芽の形状が違って可愛らしい。心がパッと明るくなる。生命の力を感じる。
畑の隅には、曼殊沙華が咲き誇っている。