2 畑はじめ

 畑をはじめて1ヶ月が経ちました。実際にやってみて、関わってみなければほんとうの学びにならないことがあるのかもしれない。この1ヶ月で畑を通してそう感じました。その理由とは……?この1ヶ月の日記をお楽しみください。

2月11日 土おこし

 土をおこした。一緒に借りている友人家族とうちの子も一緒だ。スコップで土を掘ると、黄色いショウガのようなものが次から次へと出てくる。ウコンだ。前に畑を使っていた人が植えたものらしい。際限がなく出てくるウコンの土を払っては畑の隅に置く。

ウコン

 ふと子を見やると、土のついたウコンを今にも口に入れようとしている。驚いて思わず叱ったが、どんな味がするのか実際に確かめたいと思ったのだろう。坂口恭平も土をなめてみたと畑エッセイ『土になる』で書いていた。たしかに、ここの土はどんな味がするのだろうか。私も少し知りたくなった。

 ひと通り土をおこし、phを測って有機石灰を撒く。石灰を土に混ぜ込むために、再びクワを握る。

 子どもたちは遊んでいる。水と土、生えている草を使ってスープを作っているらしい。そこにうちの子がミミズを連れて行く。友人の子が「ミミズ(見た目が)きもちわるいからいやだ」という。うちの子は「ミミズ(触ると)きもちいいよ」と返す。それを聞いて大人は笑う。

 畑とそこにいる生き物たちは私たちの心をほぐしてくれる。

土おこし

2月15日 自然農について

 畑をやると決めたとき自然農の本も買った。知人が薦めてくれたからだ。自然農は、耕さない、肥料を撒かない、草を抜かない。なぜだろうか、不思議と心を惹かれた。

 『土になる』にもおそらく自然農を実践していると思われるアオキさんという人が出てくる。坂口恭平はアオキさんの畑に憧れているのだという。

 ではなぜ自然農を私は選ばなかったのか。本を読んでからどういう手法を取るか悩んでいたけれど、はじめて畑に行った日、畑ができればなんだっていいと思った。

 間を取って、有機栽培とした。まずやってみることだ。そうすれば自ずといろんなことが分かるだろう。やってみて、ほかのことも試してみればいい。いつか自然農にたどり着くのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。その過程を楽しみたいと思う。

2月22日 施肥

牛ふんと鶏ふんをすきこむ前の状態

 晴れた。強風のなか畑へ。友人は先に着いている。土おこししてから11日が経った。本によると、ほんとうなら1週間くらいで牛ふんと鶏ふんを撒いた方がいいらしい。雨が降ったり友人と都合が合わなかったりで遅くなってしまった。

 撒くのは牛ふん12リットル(4リットルを3袋)と鶏ふん15キロ。袋を開けて土の上にバラバラと撒き、すきこんでいく。私はスコップで1列ずつ丁寧に。友人はクワで全体を混ぜるように。「性格が出るね」と友人が笑う。

 風は冷たいのにすぐに体がぽかぽかしてくる。上着を脱いで作業を続ける。強風すぎて、肥料の匂いがあまり気にならない。ミミズがこんにちはしたり、小さなカエルが跳び出てきたり。

 1時間ほどで終わる。腹が減った。

3月1日 畑と環境負荷について

 森田真生『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』を読んでいる。著者はコロナ禍で自宅の裏庭に菜園をつくりはじめた。

農業は実際、環境負荷の極めて大きな営みなのだ。その三大要因は、耕起(耕すこと)、施肥(肥料を与えること)、そして農薬(の散布)である。耕すことで土壌は劣化し、土中に蓄えられていた炭素は空中に放出されて地球温暖化を加速させていく。産業革命から20世紀の終わりまでに大気に加えられた炭素の4分の1から3分の1は、土を耕すことによって生み出されたものだという。土壌が吸収しきれない肥料は地下水を汚染し、やがて海へ流れ、海洋生態系を攪乱していく。
— https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/bokutachi/

 私も土を耕し、肥料を撒いた。知らず知らずのうちに環境負荷の大きい手法を取っていたのだろうか。詳しくはまだ分からない。

 これから本の中で引用・紹介してあったデイビッド・モンゴメリ『土・牛・微生物』(おもしろそうなタイトル!)や「協生農法実践マニュアル」を読もうと思う。無知の罪深さを感じている。

 しかしこれも自分で実際に畑をやってみなければスルーしていたことかもしれない。これまでどこかで触れたことがあったかもしれないが、ピンと来ていなかった。

 環境負荷の大きいことなんて、時々ペットボトルを購入したりなど畑に限らず日常的にいろいろやってしまっている。しかしそれと知りながらわざわざ畑をやるのに負荷の大きい手法を取りたくはない。すでにやってしまったことは戻せないので、畑に通いつつ学び続けようと思う。

一カ月を振り返って

 もともとからだを動かすことが目的ではじめた畑だが、土づくりの段階では毎日通うわけではなく、運動習慣はつかなかった。しかし一度畑に行くと休みを挟みつつも1時間~2時間は体を動かすので、心地よい疲労感に襲われて、その日は熟睡できる。

 子どもたちや友人と手や体を動かしつつおしゃべりできるのもいい。晴れた空の下で、風を感じながら土をいじり口を動かすのは心地よい時間だ。自然と笑顔になる。

 いよいよ明日畝をつくり苗を植える。本格的な畑ライフのはじまりだ。