閒(あわい)の住人が、今週観た/聴いた/読んだ/食べたものなどを、本人の紹介コメント付きでいくつか選出してご紹介します。
■今週の好き:猫と浮世絵とアタゴオル(ますむらひろし北斎画集新装版『ATAGOAL×HOKUSAI』)
ひと月ほど前に、名古屋市博物館で開催中の「もしも猫展」記念講演「国芳、猫を描く」に行ってきた。「もしも猫展」は、<江戸の擬人化表現の面白さと魅力を歌川国芳の猫擬人化作品から探る>をテーマにした特別展。歌川国芳と動物浮世絵がとにかく好きな私に行かない選択肢はない。
私が浮世絵を好むのは、そこから江戸が知れる、浮世絵から江戸の風俗を読み解くことができる、というのが大きいのだと思う。多くの場合、見たものが描かれているだけでなく、浮世絵には「謎かけ」が込められている。例えば和歌、例えば歌舞伎、歴史や地域の言い伝えなど、そういった「教養」ありきで読み解けるような工夫を、当時の絵師は真剣にひねりにひねって制作していたはずだ。江戸の高貴な方々も金持ちも庶民も、それを面白がってあーだこーだ言いながら、謎解きと観賞を日々楽しむ。なんてユートピア。
浮世絵を見ていると、わりと瞬時にタイムトリップした気分になれるのだから、お籠もり気質の私にどれなけピッタリな娯楽なのか。
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浮世絵と猫の擬人化と言えば、偶然にも少し前にますむらひろしの北斎画集新装版『ATAGOAL×HOKUSAI』を買っていた。
『アタゴオル』は、子どもの時にのめり込んで読んでいた猫と人間がともに暮らす不思議な森の物語で、ますむらひろしのライフワーク的大長編シリーズ。私が生まれた年に連載が始まり、40年に届かないくらいで完結した。富嶽三十六景をはじめとする葛飾北斎の浮世絵53作をアタゴオルの世界で再現したのがこの画集。北斎の浮世絵とアタゴオル北斎を見比べると発見の連続。
ページをめくると、北斎の中にヒデヨシとその仲間達——ヒデヨシはアタゴオルの主人公であるザ・傍若無人の巨猫(本当はデブ猫と言いたいところ、ちょっと配慮した)——がいる。日々ファンタジーにトリップしていた少女時代と、江戸にトリップしたい現代の私が出逢えているような。その映像のバカバカしさにも楽しくなる。
現実逃避にもってこいなアイテムをまた一つ手に入れてしまったよ。
サエコさんより
■読んだ漫画:平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』
学生時代からの友達が自殺したことをニュースで知り、友達の遺骨と海を目指す女性の話。
女の友情のわけわかんないところと、恋に近い独占欲と執着が、かなり温度をもって表現されています。
そして、死と残された人間のどうしようもなさ。
私は少しずつ色んな登場人物に共感しました。
ゆーさんより
■読んだもの:地球の歩き方ガチ冒険事業部 (編集) 『地球の歩き方 ガチ冒険~地球の歩き方社員の旅日記~』
いやー良かった。世間に「旅」の門戸を広く開け放った1979年刊行の「地球の歩き方」シリーズは、時代の流れと共に、読者のニーズも様々になり、編集員も多様となり、結果、良くも悪くも「ピンからキリまで網羅した」ガイドブックとなっていた。もう一度、「バックパッカーのためのガイドブック」を作りたい。インド料理屋でワインを4本開けながらそう意気投合した4人の社員が、有志で電子書籍を作るプロジェクトを立ち上げる。と言って、まぁ何のことはない、ただのどこにでもいる旅好きが旅の与太話を書いているだけの本である。それが良い。それがとても良い。冒頭には「ありきたりな旅の思い出の「それ」を詰め込んであるだけです」とあるが、その「それ」が、どれほど多様で、唯一無二で、ありふれていて、愛おしいことか。こんな話が人の数だけあるんだよなと、あぁやっぱり人間って、愛しいよなぁ、と、あらためて思える読み物でありました。
もときさんより
■行ったところ:「PLAY! PARK ERIC CARLE」
家族3人で二子玉川の「PLAY! PARK ERIC CARLE」へ。ツマとムスメはリピーターで、僕ははじめてだったのだが、いやぁ予想以上に楽しかった。『はらぺこあおむし』などの絵本でおなじみの、エリック・カールの世界観でつくられた空間で、緑の迷路、ディスカバリーゾーン(展示スペース)、アスレチック、オートマタ(からくり人形)、ワークショップ、アトリエ(自由に絵を書いたり工作したりできる)など盛りだくさんのプレイパークです。休憩スペースもドリンクバーもあって、子どもを一応見失わないように見守りつつも、ほどよく放置して大丈夫な安全さで、親も休憩しつつのんびり過ごせるのが良かったです。お月さまの部屋は、療育センターのスヌーズレン的な気持ちよさがあって、「これは俺の脳にいいやつだ」って、ムスメと別の角度でテンション上がってしまいました。
ゆうへい