「またやってしまったな。」そう思ったのは中野止まりの中央線各駅停車から降ろされた時だった。中央線在住の私がこのような初歩的なミスを犯したのは、電車に乗る直前、新宿駅のホームで、スマートフォンのゲームに一生懸命打ち込む中年女性に気を取られていたからだ。その前に乗っていた山手線では、ずんぐりむっくりのこれまた中年男性のうたた寝の様子をじっと観察していたわけだが、それというのも、車内で自分の背後に立っていた若いカップルのやり取りが印象的だったため、周囲の人間の所作観察に意識を向けるモードに入ってしまったからだ。二人は「バルタン聖人って宇宙忍者らしいよ。知ってた?」という会話を吊り広告を見ながらしていた。渋谷から山手線に乗り込んだ直後の会話だった。12月1日月曜日の夜のことである。