レーモン・クノーの『文体練習』より その4 隠喩を用いて

劇場の終わり、地上を回遊する緑色の巨大芋虫に収容されたオットセイの群れの中で、つがいのラッコが何やら貝を叩いているのに気づく。つがいの片方は低い音を、もう片方は高い音を響かせている。貝が割れて歓喜したのか、互いの物をカツンカツンカツンと3度ぶつけ合う。私はというと薄くクリーム色をした動物図鑑を開き彼らの生態を確認しようとしたのだが、ふと右前方を見やると、グレーの体毛をしたゴリラが芋虫の内壁沿いに佇んでいる。小柄だがずんぐりとした体型のそのゴリラは、目を瞑って何やら考えこんでいるようでもあり、眠っているようでもあり、賢者なのか愚者なのか検討がつかぬ。

芋虫が一時停止して脇腹を開いたので私はその隙に脱出し、小さな銀盤を一生懸命つついているキツツキを横目に、今度は黄色い腹をした芋虫に飛び込んだ。