レーモン・クノーの『文体練習』より その3 控え目に

わたくしたちは電車で移動しておりました。
まだ若く、落ち着いているとは言い切れないふたりの男女が、壁の掲示物について会話を交わし、それから親密そうに頭をコツンと当てました。
左前方には、熟年の紳士がいくぶんお疲れの様子でまどろんでいるのが見えました。

新宿駅に降り立つと妙齢の淑女が携帯機器を真剣な眼差しで覗きこんでおりました。