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鳥籠

January 9, 2024 Yuhei Suzuki

「鳥籠」

 「おかえり」
 「ただいま」
 「どうしたの、それ」
 玄関まで出迎えにきた彼女が、私の両手の先を見て言った。

 「先生の家から。どうせそのうち捨てちゃうから、なんでも持ってってくださいって」
 「ああ、息子さんね。でもなんでまたわざわざ」
 レインコートを脱がせ、タオルで私の頭を拭きながら、マットに置かれた空の鳥籠を、彼女はなおも怪訝そうに見つめる。私が鳥を飼うつもりでないことは彼女も分かっている。

 「本とか論文は、上の人たちが研究に使いたいだろうし、お皿とかコップとかは、もう二人で使う分は足りてるし、かさばるでしょ」
 「それで、もっとかさばる鳥籠をもらってきたわけね」
 リビングに向かう十歩足らずの間に矛盾を指摘され、そこで私はようやく、顔を上げて彼女の顔を見ることができた。

 「だってさ。だって」
 私はテーブルに座って、鳥籠を爪で弾きながら言葉を探す。彼女はキッチンでやかんを火にかける。

 「この子が死んだのは寿命で、先生のとは関係ないよ。別事象」
 「うん、まぁそうだろうね」
 「あそこに残しといたら、追悼特集のリード文と挿絵に使われそうだったから。それで、なんか」
 「あぁ、そういうこと」

 

 「四十九日経ったら捨てる」
 「いいよ、気が済むまで置いたらいい」

In novel
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