「鈴木さん、鬼滅みたー?」橋本みさおさんとの思い出 2022/09/14

珍しく早く家を出ることが出来たので、ムスメと二人、汗だくダッシュすることもなくテクテクのんびり余裕を持って登園。介助のシフトの日で、いつもの電車に乗るまで30分ほど余裕が出来たので、駅前カフェに入って作業することにしたら、そこの店員さんがあまりに爽やかで好印象なコミュニケーションをされる方でした。

レジの順番が来たときの「おはようございます!」も、まぁこれがいい声で、自分もつられて、いつもよりまあまあ爽やかな声量・声色(友達同士のそれって感じのテンション)で「おはようございまーす」って返して、なんかそこで満足してしまったのか、「注文をする」という取引的行為を忘れて1.5〜2秒ぐらい間が空いてしまった笑

早朝なのでお客さんもそれほど多くなく、おそらくこの時間帯は彼女一人のシフトなのだろう、レジで注文を受けて飲み物を出し、合間を見計らってはキッチンの方に引っ込んで片付けや洗い物をしていたのだが、やはりその間もホールの状況をよく見ているのだろう、お客さんが一人、席を立って外に出るのを察知すると、すぐにキッチンから顔を出してきて「ありがとうございまーす!いってらっしゃいませ!」と、これまたよく通るいい声でご挨拶をしていた。

なんか僕はこういう、日常で「いい仕事」をする人に出会うと、やたらと感動する傾向がある笑 自分が、身体もぎこちなく、脳内もとっ散らかっているので、なめらかな所作に憧れがあるのだろう。

友情は搾取されないし搾取することもできないが、「友情」を騙った搾取というものはある、というような話題が友人とのチャットであった。残るものは残る。

夜、さくら会の総会にオンラインで参加。先日逝去された橋本操さんとの思い出をみなさんがお話するのを聞いていた。

みさおさんと「会った」のは、去年有楽町にみんな集まってボッチャをした日に対面でご挨拶したのが一度、さくら会のZoomミーティングでみさおさん含む理事のみなさんに研究事業のご報告をしたのが一度、重度訪問介護ヘルパーの現任者研修でみさおさんがお話する講習ビデオを見たのが一度、と、オンラインを含めても3回しかなく、やはりこのご時世、私たち介助の仕事に携わる者はみな、この長々と続く感染症に人並み以上にとにかく気をつけて、それでも人と触れ続ける仕事をそれぞれの現場で続けねばならず、その後、みさおさんのご自宅に伺う機会は無いままのお別れとなってしまったのだけれど、ここ数年は、色々と活動や研究を共にするみなさん、特に川口さんから、折に触れて操さんの数々の伝説というか、エピソードをお聞きしていたので、自分の中に「みさおさん」の情報というか存在が、実際にお会いした回数以上に大きく、立体感をもって蓄積されていたことに気づく。

今年3月に出した論文「介護職員等によるたん吸引・経管栄養の法制化の経緯と論点の分析——「医療的ケア」をめぐる介護現場ニーズと医事法制の衝突・架橋の試み」を書くにあたって、たん吸引の法制化に関する厚労省の審議会議事録を全回・全文読むことになったのだが、そこにもやはり、みさおさんがいた。

この審議会での議論、みさおさんをはじめ関係者の方々の提言により、たん吸引・経管栄養を必要とする人が引き続き柔軟にヘルパーを活用しながら在宅生活を続けられる状況は守られたし、僕を含む重訪ヘルパーが「特定の者」つまり自分が介助に入る利用者さん一人ひとりに特化した形で研修・実習を受けて活動をすることができている。そんなわけで僕も、みさおさんからたくさんのことを教わってきた一人なのだ。

有楽町でのボッチャ大会のあと、解散前に川口さんに連れられてみさおさんに対面し、紹介いただき、ご挨拶したときのみさおさんの言葉は「鈴木さん、鬼滅みたー?」だった。ちょうど鬼滅ブームで映画上映していた時期なのだ。「やー、僕マンガは全部読んだんですけど、映画はまだ観に行ってないんですよー」と答え、その場でみさおさんや周りにいた人たちと、今度みんなで一緒に観に行きたいねぇなんて話をしたのをよく覚えている。結局、一緒に「鬼滅」を観に行くことは叶わなかったのだが(というか、具体的な計画・相談をする以前に、いつの間にか上映期間が終わっていた)、今度、家でひとり酒でも飲みながらアマプラで観ようと思う。命を燃やせって、煉獄さん言ってたな。月並みだが、みさおさんの「後輩」の一人として、ちゃんとバトンを受け取って命燃やしていこうと思う(ただし、燃え尽きないように)。

山崎摩耶さんが書かれた書籍『マドンナの首飾り―橋本みさお、ALSという生き方』

さくら会がまとめた、みさおさんの功績「当会で把握している橋本操さんの功績」