夫と私のよもやま話Vol.7

夢をみた。強烈な夢だった。
その夢の中で、私は強く「子どもが欲しい」と思っていた。子どもを産むためにどんな困難があったとしても、産んでからどんな辛酸を舐めようとも、それでも子どもを産むんだ、と私は強く夢の中で誓っていた。
目が覚めると私は夢の余韻に打ちひしがれ泣いていた。そこに夫が起きてきて、「どうしたのどうしたの」と介抱してくれた。そして「こんな強烈な夢は見たことがない」と言って私はまた泣いた。
そのまままた眠りについたが、その晩私はまた同じ夢をみた。
どうも何か気になるぞ、ということで私はスーモで物件探しを始めた。当時住んでいた賃貸マンションはなぜか子どもNGだったのだ。

これまでも私たち夫婦はこの「子どもNG」という理由から、また、賃貸マンションより持ち家が欲しいという理由から、家探しを続けてきた。
あるときは私がスーモカウンターのお姉さんに相談し続けて困憊し、あるときはこれまた私が分譲マンションや一戸建ての資料を大量に請求し、家が資料だらけになってしまって困憊するなど、家探しはかなり難航していた。

しかしこの夢のあとでスーモを見ると、なんと価格帯的にも内装的にもとてもピッタリな条件の物件が見つかった。こんな物件中々ない、と夫に興奮して話し、とりあえず物件情報を開示請求してみようとなった。が、実際に物件情報を開示してみるとその物件は事故物件だということがわかった。
「またダメだったか……」と思いながら不動産屋と連絡を取ると、「似たような物件をお送りしますよ」という回答が返ってきた。

するとどうだろう。先ごろの物件よりさらにいい物件が候補として挙がってきた。駅徒歩15分、築浅ではないけれどフルリノベ済み、3LDK、値段も申し分ない。「ここ見に行こうよ」と夫を誘った。

見に行った物件の玄関に一歩足を踏み入れるといい香りがして、南東角部屋の日当たり抜群な部屋がそこにはあった。窓を開けるとさわやかな空気が身体を通り抜けるような気持ちのいい心地がして、内見が終わった後には「ここしかないよ」と夫を言いくるめた。
その日の晩御飯で行きつけのイタリアンに行くと、我々夫婦はマスターに内見に行った話をした。するとマスターが「いい不動産屋を紹介しますよ」と声をかけてくださった。夫も「こんなに大きな買い物をするんだから、そんな内見に一回行ったくらいで決めるなんてダメだよ。最低でも3軒は見て回らないとだめ。あと相見積もりを取らないとダメ。」と言って、私はそうだねぇと自分の軽率さを少々反省した。
マスターは食事中に不動産屋さんとの席をセッティングしてくれて、あとからやってきた不動産屋さんに今の状況を伝えた。その後くたくたになって夫婦で帰宅し、「でも今日の物件はよかったね」と言い合ったことは覚えている。

しばらくして、私の父に「今マンションを探しててさ」という話をする機会があった。父は建築関係の現場仕事をしているので、「俺がツクリを見てあげるよ」と言ってくれて、一緒に物件巡りをすることになった。真夏の暑い暑い日のことだった。不動産屋は最初に物件を紹介してくれた大手のところで、車を家までまわしてくれた。最初に私達が一番気に入った物件を父と一緒に見ると、父は小声で「これはええわ」「ここはちゃんとしてる」と細部を確認しながら呟いた。その後2軒ほど家を内見したが、やはり「ここしかない」という気持ちは揺らがなかった。

父からのお墨付きをもらったので、これはもうここに決めるしかないと思い、夫婦で決断をして大手不動産屋を介して家を買うことにした。

このような流れで私たちは新居を手に入れた。3LDKの間取りで、将来子ども部屋になるかもしれないという名目での私の自室も手に入れた。引越しはおまかせパックにしたので荷詰めも荷解きも業者の人が物凄く丁寧にやってくれて、それでも夫婦二人へとへとに疲れた。引越し後に役所をまわり、部屋が整い、ようやく落ち着いたのが最近のことだ。

はじめに触れた夢の中で私は子どもを欲しがっていたし、子どもが欲しいと思う気持ちはやはりあるけれど、現実的な問題としてやはり難しいかもしれないという葛藤も確かにある。
もうすぐ結婚して2年になる。このマイホームを手に入れて、また新たに始まる夫婦の物語があるような気がして、月並みだけれど、わくわくしている。新しい風の予感がする。