海外大学院留学の奨学金について

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NYに住む日本人の友人が、こちらの大学院の修士課程に合格したという知らせを受けた。それで、海外在住の日本人でも出せる日本の奨学金はないかと相談されたので、改めて海外留学奨学金関連の情報を整理してみた。といっても、既存の各種情報サイトが充実しているので、そこから引用しつつのコメントになるが。現在、海外留学を考えている日本人の方は参考になるかもしれない。

Ⅰ. 奨学金を含めた留学情報サイトなど
海外留学に関する基本情報は、もはやこのような個人ブログでわざわざ改めて書く必要もないほど、各種サイトのまとめが充実しているように思う。特にアメリカ留学に関しては、
日米教育委員会(いわゆるフルブライト)
米国大学院学生会
などのサイトを訪問すれば、出願までのプロセスやアプリケーションに必要な書類や試験などは簡単に確認出来る。

また最近では、身の回りの友人がアメリカ以外の国へ留学した事例を見聞きする数も少しずつ増えてきているように思う。今回は踏み入らないが、たとえば海外大学院留学説明会 UT-OSACなどは、東大のキャンパスで定期的に説明会を開催しており、様々な国・分野の海外大学院へ留学する学生から話を聞くことができる。

本エントリは、海外留学のためのお金の工面、とりわけ奨学金についてフォーカスするため、それ以外のことで海外留学について興味のある方は、上記サイトなどをまず参照していただければと思う。

Ⅱ. 日本の海外大学院留学奨学金情報
海外留学はお金がかかる。プログラムや国・地域によっては比較的安価なものもあったり、留学先の大学やプログラムによっては奨学金等々の資金援助が充実しているところもあるが、そういうところばかりでもない。やはりハーバードやコロンビアなど、アメリカの有名どころの私立大学は、年間数百万円単位で学費・生活費が必要になる。合格通知をもらってから、実際の入学・渡航手続きに際しては、どこの大学もだいたい、最低1年分は学費・生活費を支弁出来るという財政証明を求める。預金残高とか、奨学金の受給通知とか。入学後が楽というわけでもないけど、2年目以降は、学内でのTeaching AssistantやResearch Assistantなどでお給料が出たり授業料が減免になったりする手段もあるので、やはり一番プレッシャーがかかるのは入学前、1年目の資金繰りだろう。

さてどうやって多額の学費・生活費を支弁するか。
1. 自分で稼ぐ・貯金する
2. 親類縁者に出してもらう、借りる
3. 金融機関に借りる
4. 日本国内あるいは留学先の国・地域の奨学金・研究助成金などを獲得する
5. 留学先の大学から学費・生活費援助が得られる待遇を獲得する
などなど、色んな方法があるが、5はPh.Dコースなど、将来研究者として大学への貢献が期待される学生に出されるもので、学部や修士課程での留学ではほぼ無いと思っておいた方が良い。1は理想的でカッコイイが、みんながみんな短期間で高給取りの仕事に就けるわけでもないし、2も家庭事情・交友関係などによるし、お金以外に気持ちの問題とか、色々デリケートな話ではある。3のように普通に借金して、利子含め将来働いて返すというのも勿論あるが、額も大きいし、海外大学院を出たからといってみんなその後大儲け出来るわけではないので、将来の見通しがつかない出願時点の若者としては、なるべくなら避けたい選択肢ではある。奨学金、特に返還義務がなく給付のものをいただくことが出来るなら、心理的にも経済的にも非常に有難い。というわけで、日本の海外留学奨学金について紹介していく。

大学院に限らず、海外留学奨学金は、インターネットで検索をかければ色々と情報が見つかる。あるいは、自分が所属する大学の掲示板等にも奨学金情報の貼り出しがある。以下、UT-OSACのアーカイブ資料「海外大学院留学説明会 2012年6月4日 東京大学 配布資料」から引用。

日本の留学奨学金情報は日米教育委員会(http://www.fulbright.jp/study/res/shokin.html)に
掲載されています。以下が2010年時点で、日本の主な海外大学院留学給与奨学金です。経済や
教育などの専攻は他にも奨学金がありますので、チェックしてみてください。

  • 伊藤国際教育交流財団 http://www.itofound.or.jp/
  • 村田海外留学奨学会 http://www.muratec.jp/ssp/
  • 中島記念国際交流財団 http://www.nakajimafound.or.jp/
  • 平和中島財団 http://heiwanakajimazaidan.jp/
  • 船井情報科学振興財団 http://www.funai.or.jp/
  • JASSO http://www.jasso.go.jp/scholarship/long_term_h.html (出身大学制限あり)
  • 吉田育英会 http://www.ysf.or.jp/ (出身大学制限あり)
  • 国際文化教育交流財団 http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/ishizaka/ishizaka.html
    (出身大学制限あり)

上記紹介されている通り、だいたいの留学奨学金は日米教育委員会のサイトに一覧化されている。上記、UT-OSACの配布資料本文で紹介されていないが、他にも有名どころとしては、

  • フルブライト奨学金
  • 本庄国際奨学財団・海外留学日本人大学院生奨学金
  • 経団連国際教育交流財団
  • ロータリー財団国際親善奨学金プログラム
  • などがある。
    ロータリーの国際親善奨学金プログラムは、サイトを訪問したところ2012-2013年度で終了とあるが、”ロータリアンはその後も、財団の新地区補助金とグローバル補助金を利用して、柔軟に、次世代のリーダーとなる奨学生を支援することができます。”との記述もあり、今後別の種類の奨学金・補助金が出る可能性もありそうだ。留学を考えている人は、自分の所属地区のロータリー財団のページを定期的にチェックしておくと良いと思う。

    アメリカ以外の国への留学者を対象とした奨学金や、芸術やスポーツ等、特定の分野での留学者に絞った募集を行なっている比較的マイナーな奨学金などは、自分で様々な検索ワードを入れてみれば他にも見つかるだろう。

    それぞれ、募集要項も出願に必要な書類も異なり、また募集期間も様々であるため、自分の状況と照らし合わせて、出願スケジュールを作ると良い。留学先の大学・大学院への出願より先に締め切り・合否決定がなされる奨学金もあれば、留学する時の春や夏にならないと決まらないものもあるので要注意。

    Ⅲ. 今回のケース

    Ⅱで触れた通り、留学に際して、どのような資金繰りをするか、どのような手段や機関を当てに出来るかは、結局自分自身のケースに照らし合わせて考えるしかない。そして、Ⅲで紹介した各種奨学金に申請出来るかどうかは、だいたい下記のような要素が絡んでくる。

    • 出自: 国籍・出身地方・民族性等
    • 居住地
    • 年齢: 25歳以下、35歳以下等
    • 所属: 国内or国外の大学、研究員、会社員等
    • 取得済み学位や職務経験: 学士、修士、開発援助の職務経験の有無等
    • 留学先のプログラムの性質: 学士・修士・博士、学術研究or実務系大学院、交換留学等
    • 留学するタイミングや期間
    • 留学先の専攻・研究分野
    • 他の奨学金を取得しているかどうか

    などなど…これら募集要件の段階で、自分はそもそもこの奨学金への応募適格がない、ということもある。今回相談を受けた友人だが、どこに出願出来るだろうか。彼女の場合は日本国籍ではあるものの、アメリカの大学学部卒で、現在もアメリカに住んで働いているため、たとえば「日本在住の者」という応募要件が含まれているフルブライト、伊藤、経団連、JASSO等々の主要な奨学金はアウトっぽい。あるいは、「応募時点で日本の大学・大学院に所属している」ことを求める村田やJASSOもアウト。Ph.Dではないので船井もアウト。進学先は建築の修士課程であるが、こちらの私立大学で外国人の修士向けに奨学金を用意しているところはほとんど無い。ううむ、なかなか厳しい。僕がざっと探した程度だが、彼女でも出せそうな奨学金が2つだけ見つかった。

  • 本庄国際奨学財団・海外留学日本人大学院生奨学金
  • 募集ページを見ると、博士課程優先っぽいけど、修士でも応募は可能。それから海外在住者でも応募可能と明記してある。募集期間は2013 年 2 月 1 日~2013 年 4 月 30 日。まだ間に合う。僕もここは出願して、最終面接まで行ったもののダメでした、そういえば。

  • 中島記念国際交流財団
  • 平成25年度採用はもう終わっちゃったみたいだけど、”平成26年度採用の募集要項は平成25年5月末~6月上旬に更新の予定です。”とのことなので、今年出願して、来年度受給出来る可能性はある。対象分野として情報科学・生命科学・経営科学が挙げられているが、聞いた話では、奨学金の分野制限・指定といっても曖昧なところも多く、情報科学といっても、航空宇宙や物理や建築の留学生が受給しているケースもあるらしい。彼女も建築なので、情報科学と銘打って、出願できないことはなさそうだ。

    他にはないだろうか。建築関連で検索している課程で、奨学金とは違うが、ひとつ面白そうな財団をみつけた。

  • 財団法人 ユニオン造形文化財団
  • 空間造形デザインに関して、調査研究やデザイン賞などを設けている。奨学金に限っていえば、居住地や学位の縛りがけっこう厳しいので、彼女の場合は、こういう、研究助成やデザインコンペなど、専門性を活かしてお金を取りにいく作戦の方が良いかもしれない。

    このブログをお読みの方で、アメリカ在住の日本人・建築専攻の修士留学という条件で出せそうなその他奨学金、研究助成、コンペ等々があれば情報を寄せていただけてれば幸甚である。

    Ⅳ. 雑感
    消費者目線で文句を言うことはたやすいが、財団・基金の設立時の理念や目的、それに照らしてアプローチしたい学生の層も様々であろうから、奨学金ごとに応募要件がある程度限定されてしまうことは理解できる。応募時点での日本在住ないし日本の大学への所属要件や、留学後は日本に帰国or日本で勤務するという制約なども、選考プロセス(面接や説明会)での手間を省くという実務的な理由や、日本の団体から奨学金を貰うのだから、卒業後は日本にダイレクトに貢献して欲しいという投資対効果の観点からだろう。しかし、これだけグローバル化が進み、働き方も多様になった今、日本人が海外にいながらにして日本との関係を持ち続ける、日本に対して貢献する手段は決して少なくない。国籍条件はともかく、所属大学や居住地で機械的に線引きするのは少しもったいないと感じる。

    改めて日本にある各奨学金の概要をざっと眺めた感触では、非・現役日本学生、修士課程留学という人は、出せる奨学金が数がやはり少ない。しかし、そういうタイプの人もけっこう多いんじゃないかと思うのだが。学部卒業してひとまず社会人として数年働いて、それでもう一度大学で勉強したくなって、でも生涯研究者って方向でもなく、学んだことをまた実社会の仕事で活かしたいというような人。外資系コンサルや金融で数年働いて自分で貯金してMBAへ…というのは昔からあるパターンだが、それ以外の職種・業種の社会人であっても、留学したい人、留学すべきだという人材もいるだろう。そういう人たちのためのファンディング手段が、エアーポケットのようになっている感がある。

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