駅のおじいさんを抱きしめたい

Pocket

内面が揺れている時に限ってやっぱり泣きたくなるような出来事は起こるわけで。それは42nd Street, Aトレインに乗り換えるPort Authorityのホームでのことでした。

階段からホームに降り立つと、背の低くて丸い身体のおじいさんが取り乱し気味に、”How can I get to Queens!? Tell me what to do!!”と言っている。聞くまでもなくここはQueens方面Uptownの電車が来るホームであり、それは看板にも書いてあるのだけど、そのおじいさんの様子を見るに、それはたぶん、彼がなんらかの精神疾患か障害かを抱えているゆえの不安と取り乱しであるようだった。

その時僕は、思わずおじいさんを抱きしめたくなった。「ああ、あぁ、よくそのことを言ってくれた…!」と。「そうだよ、この電車が無事目的地に辿り着く保証なんて無いじゃないか。みんなそのことを見ないふりして生きてるだけなんだ。考えたら不安で耐えられない!」

それで泣きそうになっていたら電車がやってきて、やっぱりおじいさんは”Is this train to Queens!? Tell me!”と不安がっていて、ドアの前でオロオロしている。僕は駆け寄って一緒に電車に乗り込み、肩を抱き支えながら、「大丈夫、大丈夫、きっとQueensへ行きます、信じましょう」と一緒にオロオロしたかったのだけど、あぁなんということだ、その電車はEトレイン!僕はこれからAトレインに乗って大学に行かなきゃならないのだ!

僕たちは同じ電車に乗ることができない。その圧倒的現実に打ちひしがれそうになったとき、なんと救世主。細身で妙齢のおじさまが、彼の背を叩いて”Yes!”と(イエス様!)そのおじさまはおじいさんとちょっと離れてホームに立っていたから、普通にしていれば別の車両に乗り込むはずだったろうけど、おじいさんの様子を見て、一緒の車両に乗り込んだのだった。だからといって別に何をするわけでもないけど、とにかくおじいさんは(やはりオロオロしながらも)無事車両に乗り込み、空いた座席に座って旅立っていった。

資本主義の夢と呪いを体現したかのようなこの街で、それでもいつも絶妙なタイミングで立ち現れる人のカインドネスというものに、僕はたいそう驚愕する。

Pocket

Leave a Reply

  • (will not be published)